●原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
賃貸住宅の退去時に借り手がどこまで負担して部屋を修繕するかを示すガイドラインを国土交通省は6年ぶりに改訂した。
減らない原状回復のトラブルに対し、新ガイドラインはトラブル防止のため、傷・汚れなどを契約時に借り手と貸し手が双方で確認をしておくように規定するなど、トラブル防止策を盛り込んだ。ガイドラインの本体は、不動産適正取引推進機構で販売される。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 の改訂について
民間賃貸住宅の退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため賃貸人・賃借人双方があらかじめ理解しておくべき一般的なルールを示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について、更なる普及促進を図るため、「賃貸住宅市場整備研究会(委員長:山崎福寿上智大学経済学部教授)」の下に「賃貸住宅に係る紛争等の防止方策検討ワーキングチーム(座長:犬塚浩弁護士)」を設け、同ガイドラインの改訂を行いました。(別紙1、別紙2参照)
改訂のポイント
(1)トラブルの未然防止に関する事項について新たに項目を設けました。
(2)損耗・毀損の事例を追加しました。
(3)原状回復の考え方の理解を促すため「Q&A」を新たに設けました。
(4)原状回復に関連する裁判例を更新追加し充実を図りました。
改訂の概要
(1)原状回復にかかるトラブルの未然防止
退去時の原状回復にかかるトラブルを未然に防止するためには、契約時において当該物件の現状を確認する等の対応が必要なことから、今回の改訂版では、「原状回復にかかるトラブルの未然防止」に関する事項を整理しました。
契約時における物件の確認の徹底
入居時にチェックリストを作成し部位ごとの現況を、当事者が立会いのうえで十分に確認すること。
原状回復に関する契約条件等の開示
賃貸人は賃借人に対して原状回復の内容等を契約前に開示し、賃借人の十分な認識を得ること。
特約について
賃貸借契約において特約を設ける場合は、以下の点に留意する必要があります。
イ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
ロ 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
ハ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
(2)損耗・毀損の事例の追加
最近の裁判例や国民生活センター等における個別具体の相談事例の中から、通常損耗か否かの判断でトラブルになりやすいと考えられるものを検討し通常・一般的な例示として事例を追加しました。
例1 冷蔵庫下のサビを放置し、床に損害を与えることは賃借人の善管注意義務違反に該当する場合が多いと考えられます。
例2 風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等の清掃・手入れを使用期間中に怠った場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多いと考えられます。
(3)「Q&A」の新設
本文の内容のポイント部分をQ&A形式にして、容易に理解できるようにしました。
例1
Q 退去するときのトラブルを避けるには、どのようにすればよいのでしょうか。
A 退去時はもちろん入居時にも、賃貸人・賃借人双方が立会い、部屋の状況を確認しチェックリストを作成しておくことが有効といえます。
例2
Q 建物を借りるときには、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。
A 退去時の原状回復について、賃貸借契約書の内容をよく読み契約事項をしっかりと確認しておくことが大切です。
(4)掲載判例の更新・整理と新たな判例の追加
裁判例については、類似の裁判例の重複掲載を整理し、平成10年度以降に示された10事例を追加しました。
これにより、掲載裁判例数は、17事例から21事例となりました。
(5)その他
全国の消費生活センター等に寄せられた敷金や原状回復に係る相談の状況を集計分析しデータを更新しました。
相談件数は毎年度増加しており平成14年度(5249件)は平成10年度(1338件)の約3.9倍となっています。
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別紙1
賃貸住宅市場整備研究会 メンバー
(敬称略)
委員長 山崎 福寿 上智大学経済学部教授
委員 犬塚 浩 弁護士
大竹 文雄 大阪大学社会経済研究所教授
末次 正 積水ハウス(株)東京総務部情報開発室部長
田島 弘直 (財)日本賃貸住宅管理協会総合研究所長
水流潤太郎 東京都住宅局住宅政策担当部長
中井 省吾 三井不動産(株)賃貸住宅事業部長
福井 慎治 (社)全国宅地建物取引業協会連合会専務理事
升田 純 聖心女子大学教授・弁護士
賃貸住宅に係る紛争等の防止方策検討ワーキングチーム メンバー
(敬称略)
座長 犬塚 浩 弁護士
委員 熊谷 則一 弁護士
澤田 博一 (有)建物診断センター代表取締役
関 輝夫 (財)日本賃貸住宅管理協会理事
渡邊 優一 国民生活センター相談部
オブザーバー 宮代 裕司 (社)全国宅地建物取引業協会連合会
森末 一巳 東京都住宅局民間住宅部指導課
協力団体 (財)不動産適正取引推進機構
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「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の概要
ガイドラインの位置付け
原状回復にかかるトラブルが頻発していることから、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方等について、一般的な基準をガイドラインとして平成10年3月にとりまとめ、今回更なる普及・理解を深めるためその改訂を行ったものです。
ガイドラインのポイント
(1)原状回復とは
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しその費用は賃借人負担としました。
そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれるものとしました。
従って、原状回復は賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことの明確化を図っています。
(2)通常の使用とは
通常の使用といってもその範囲は極めて広く、判断基準そのものを定義することは困難であるため、建物価値の減少ととらえられる損耗等の一般的な事例を次のように区分して賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。このうちB及びA(+B)については、原状回復義務が発生し賃借人が負担すべき費用の検討が必要になります。
A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしても、発生すると考えられるもの
B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりするものと考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とはいえないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生又は拡大したと考えられるもの
A(+G):建物価値の減少の区分としてはAに該当するものの、建物価値を増大させる要素が含まれているもの
(3)経過年数の考慮
前記BやA(+B)の場合であっても経年変化や通常損耗の分は、賃借人としては賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全額を負担することとなると、当事者間の配分について合理性を欠くなどの問題があるため、賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させるのが適当です。
(4)負担対象範囲
原状回復は、毀損部分の復旧ですから、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限度の施工単位を基本としていますが、毀損部分と補修個所にギャップ(色や模様あわせ等)がある場合については当事者間で不公平とならないようにすべきです。
<問い合わせ先>
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
住宅局住宅総合整備課 マンション管理対策室 (内線39364、39365)
TEL:03-5253-8111(代表)
